野枝を虐殺し、満州の実力者となった甘粕正彦の中には、善と悪との深い二面性があった。 「世の中には絶対の善もないが、絶対の悪もない。世に在るもののすべては、善であると同時に悪である。思うてここに至ると、実に淋しい気がする」矛盾を調和させるために彼は酒に溺れていく