Published: February 12, 2025
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先ほど公開されたサム・アルトマンのインタビューをまとめました。↓ --- Q1. どんな未来が見えている? 先ほども言った通り、まだ2年ちょっととはいえ長く感じますが、実際にはそれほどの時間ではありません。そして、27か月前にできなかったことが今できるようになった変化を考えてみてください。ここまでの進歩だけでも、すでに素晴らしいものがあります。AIツールをうまく使いこなしている人には大きなレバレッジが生まれています。私たちが最近「Deep Research」という機能を出したのはちょうど1週間くらい前だったのですが、週末に少しフィードバックを確認していたら、以前はAIに懐疑的だった人々でさえ「これは、私が数日、あるいは数週間かけてやらなければならない仕事を20分でこなしてしまう。 しかも複数のタスクを同時に進められる。自分の仕事のやり方が変わるし、自分の研究分野そのものが変わるかもしれない」といった声が多く見られました。そして仮に、今後も同じペースであと2年ちょい、さらにその先も同様に進歩して10年経ったらどうなるか、という想像をしてみると、本当に信じられないようなことが可能になっているのではないかと思うのです。10年後には、私が「AIにやってほしいことは何だろう?」と考えても、もはや思いつかないくらいかもしれない。もちろん、そこに至るまで10年ありますし、AIに手伝ってもらって問いを考えることもできるでしょうね。 --- Q2. AGIの意味は? 何度か「AGI」という言葉を使うのをやめようとしたことがあって……。 結局使うのをあきらめたんです。やめたかった理由は、定義があまりにあいまいだからです。僕たちがAGIに近づくにつれ、一部の人は「もうAGIは来ている」と言うし、別の人は「地球を離れて自己複製する宇宙探査機を作るまでAGIじゃない」と言う。なので内部的には5つのレベルに分けた、もう少し細かい指標で進捗を議論しています。ですが世間にはAGIかそうでないか、という白黒の議論が根強い。でももう、その言葉は広く定着してしまっていて、僕は戦うのをあきらめました。 --- Q3. AGIが登場したことで世界が一気に変わる、といった瞬間は来る? 世界全体が「今年がAGIの年だ」と一致して認めるような、単一の明確な瞬間はないと思います。とはいえ、「自分個人にとってはAGIの瞬間を体験した」と言う人が今もすでにいます。先ほどのDeep Researchのリリースでも、「これこそ自分にとってのAGI体験だ」という人がいました。経済的価値を生み出す本物の仕事をAIがやってくれるなんて、信じられなかったという声です。でも世界中が「〇〇年がAGIの年だったね」と合意するようにはならないと思います。 --- Q4. 「天才を民主化する」みたいなイメージ? しかもすべての分野で必要なだけ。そのうえ、どのAIも互いにうまく協力して、みんな仲良し、完璧なコラボレーションなんてことになるかもしれない。すごい世界だと思います。 --- Q5. 「不平等」はどう考える? あらゆる技術がそうであるように、素晴らしい恩恵もあれば悪い影響もあります。僕としては、この技術は悪い影響よりもはるかに大きな恩恵をもたらすと思っていますが、悪い面も確実に存在するでしょう。それは実際に目にすることになると思います。僕は楽観的な人間で、「我々はやることがなくなって退屈しきっている」みたいな未来は想像していません。みんなが薬物やゲームに没頭して、あとはUBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)をもらって暇を持て余す、みたいな状況はあまり現実的とは思えない。 なぜなら、私たちはおそらく何かを創造したり他者の役に立ったりすることに本質的に喜びを感じる生き物だからです。たとえば今の私たちの仕事を、1000年前の人が見たら「こんなの仕事じゃない。食べ物や住む場所を確保しているのに、こんなに働く必要ないのに、なぜそんなに動き回っているの?」と言うかもしれない。でも私たちには生産的に何かをしている感覚が必要なんですよね。100年後、1000年後の人が何をしているかを見たら、私たちは同じことを思うかもしれません。「なんでそんなことを一生懸命やってるの? それって仕事なの?」と。しかし彼らにとっては新しくて面白いことなんでしょう。 ただし、その移行期は間違いなくゴタゴタすると思います。かなり混乱が起きるでしょう。政治家が「人々を再スキル化していけば大丈夫」と口にするのは簡単ですけど、実際それで済むかというと、そうでもないと思う。 --- Q6. 「再スキル化すればいい」というフレーズは安易な感じもしますよね? 同感です。ただ歴史を振り返ると、2世代もあればテクノロジーによる雇用の変化に社会はなんとか対応してきたという事例があるのも事実です。ただ今回の変化はおそらく、5年や10年程度の短期間で大きく進むかもしれません。それは今までにない急激な変化です。願わくばもう少し時間がかかると思いますし、実際社会には慣性がありますから、技術が猛スピードで進んでも、実際に大規模な変化が浸透するにはそれなりの時間がかかるでしょう。 直近で言うと、Deep Researchがまさにそういうインパクトを持っています。私の感覚的な推測ですが、現時点でこの機能は世界の経済活動全体のタスクのうち5%くらいはすでにカバーしてしまえるんじゃないかと思うんです。たった1つの新機能で。 --- Q7. どんなタスクです? 「この分野の研究内容をすべて要約して」とか「こういう条件に合うベビーベッドを探して」「このテーマについてコンサルタントが書くようなレポートをまとめて」「複雑な財務分析をやって」といったような仕事ですね。 --- Q8. 実際に知的労働に影響が出そうなのは、まず知識労働者というわけですね? そうですね。知的労働の分野で先にインパクトが来ると思います。物理的な労働に及ぶのはもう少し後でしょう。ロボティクスの研究にも力を入れ始めてはいますが、そちらはさらに遅れて進むものだと思います。 --- Q9. Deep Seekが安価に高性能なモデルを出してきた。オープンAI側に戦略の変更や同様はあった? そういうこと自体は全然驚きではないんです。いつかは強力な競合モデルが出てくることはわかりきっていましたから。ただ「その日」にいきなり出てきたのは予想外というだけで、全体としては驚きでもなんでもありません。彼らが良い仕事をしたのは確かで、プロダクト面でも面白い工夫をしています。思考過程(チェーン・オブ・ソート)を表示して見せるのは、多くのユーザーが望んでいたことですし、無料で広く使える範囲を設けたのもユーザーが求めていたもの。研究面ではそこまで目新しくはないですが、いくつか面白い点はあると思います。 ムーアの法則が世界を変えたように、トランジスタの集積度が18か月ごとに倍増しましたよね。それだけでも十分すごかった。私たちの観測では、あるレベルの知能を達成したら、その推論コストは年に10倍ずつ下がっていく傾向があるんです。 2年ごとに100倍安くなる感じですね。それは常軌を逸しているレベルです。ムーアの法則ですらあれだけ大きなインパクトがあったのに、それよりずっと急激なスピードなんですよ。だから、Deep Seekのような例は今後もたくさん出てくるでしょうし、私たちも価格を下げる努力を続けるつもりです。 --- Q10. オープンAIがAI業界のナップスター的存在になるんじゃないかという見方があります。音楽業界を劇的に変えたナップスターは、最初は注目を集めたものの、追随してきた後発サービスの方が最終的に持続可能なビジネスモデルを築いて市場を制した、という歴史がありますが、それと同じことがAIでも起きない? その可能性はいつでも意識しています。そうならないためには、毎日心配しながら頑張るしかない。そうならない唯一の方法ですね。今のところはなんとか粘っていますが。 --- Q11. AIインフラへの継続的な投資が必要だと書かれていました。DeepSeekの登場で「安いモデルが出たから、そんなに巨額投資をしなくてもいいんじゃないか」という議論は起こらないでしょうか? 彼らが「もう誰も大規模コンピューティングなんかやる必要ないよ」と他社を説得してくれたらうれしいんですが(笑)。でももちろん、私たちとしては重要だと考えています。 --- Q12. ソフトバンクが主導して、今まさに400億ドルを調達中だと言われているが? あれはStargate向けの資金ですよ。Stargateはずっと大きいプロジェクトなんです。Stargateは、巨大な訓練と推論のシステムを構築するための5,000億ドル規模のプロジェクトです。今からするととんでもない数字かもしれませんが、数年後にはそこまで大きく感じないかもしれない。もし次にまた取材していただけるなら、そのときは「5兆ドルの資金調達するって本当ですか?」なんて話になってるかも。そこまで進みたいですね。 --- Q13. ヨーロッパでも同じようにやる可能性はある? Stargate Europeをやりたいと思っています。先週、いくつかそんな話をしました。実現できたらいいですね。 --- Q14. 今のAIインフラ投資は規模としてはすでに半兆ドル。でも後から振り返ると、それすらも「まあまあ大きかったね」程度に見える可能性がありますか? そうなると思います。ただ、こういう投資にはブームとバスト(急上昇と暴落)がつきものですよね。もし何らかの理由で過剰投資が起こり、私たちがそのインフラを1割の値段で買い叩ける機会があればうれしいなと思っています。おそらくそんな展開もありうるのでは。 --- Q15. 各国政府の投資額は5,000億ドル単位の話と比べると少なくないか? 実際、今回ヨーロッパや他の地域の政府関係者と会う機会がありました。「Stargateをわが国でもやってほしい」みたいな話を向こうから持ちかけられたりしていて、私が「どのくらいの規模がいいんですか?」と聞くと、「100億ドル単位で」と答える国もあって驚いています。たとえば英国の8億ポンドではなく、もっと大きな規模を真剣に考えている国がある。 --- Q16. そういう動きがない国は? 世界各地で大量にインフラが作られ、クラウドサービスとして開放されるのであれば、そこにアクセスすればいいだけだと思います。もし私が政府の人間なら、少なくともその是非は検討すると思います。 --- Q17. パリの「AIアクション・サミット」でやりたいことは? 今回は、私は主に聞き役に回ろうと思っています。AIの政策や経済への影響、各国がどうすべきか、技術の進路といった私の考えは、私の発言を学習したLLMなら簡単に予測できる内容でしょう。なので、あまり自分から何かを表明するつもりはありません。昨年と比べて各国の考え方がどう変わっているのか、そこをじっくり聞きたいですね。 --- Q18. サミットからどんな成果を持ち帰りたい? 現実的に実施可能なアイデアとしては、核拡散防止のためのIAEA(国際原子力機関)みたいな国際機関を参考にすることです。IAEAは問題も多々ありますが、世界的に影響がある技術を共同で安全に管理するという意味での一例にはなっています。完璧じゃないことは重々承知ですが、各国が強力なAGIを保有するようになって、その安全基準や利益配分をどう調整するか、IAEAをベースに何らかの枠組みを作れないか、という議論がもっと進むといいなと思っています。CERNを引き合いに出すよりはIAEAのほうが参考になるかな、と。 --- Q19. 中国とアメリカとの間でAIをめぐる軍拡競争が起こっている? 先ほど言ったように、IAEAのような安全保障協調の枠組みがあれば、いわゆる「軍拡競争」ではなくもう少し建設的な協力体制が望めるかもしれない。そのほうがいいと私は思います。各国がAIのルールや恩恵の分け方を協議しつつ、うまく連携していければ。核兵器だってそうした国際協調をやっていますからね。AIでも同じように、共通の利害のもと協力は可能だと思います。 --- Q20. DeepSeekの人たちとも会う予定? 会うことになりそうです。サミットではなく別の機会にですが。 --- Q21. 何を話すつもり? まだわからないですけど、誰かがセッティングしてくれました。 --- Q22. イデオロギー的には中国と欧米ではAIの規制や価値観が違う。OpenAIはアンドゥリル(Anduril)と契約しているが、軍事的応用への関わりについてはどう考えている? まず最初の点ですが、中国と欧米では「AIが守るべき共通のルール」と「各国で異なるルール」が入り交じる形になるでしょう。人権や言論の自由といった価値観が国によって違うのは事実ですが、世界全体が存続しなければ意味がないわけで、核兵器の例のように協調する部分は協調すると思います。一方で、AIを権威主義的に使うのか、より民主的に使うのかという大きな分岐があります。私はもちろん民主的な方向を望んでいますが、それはそれで問題もあります。歴史的に、ここまで個人に強力な手段を与えるのは初めてのことです。でもそれが唯一の道だと思っています。 軍事分野についてですが、あまり大きな領域ではないとはいえ、少しずつ協力を始めています。なぜならアメリカ政府がAIを理解し、その影響を把握することは非常に重要だと思うからです。私たちとしてはできる限りのサポートをしたい。 --- Q23. トランプ大統領とは協力する中でどんな印象がありましたか? とにかくインフラ整備が好きだということですね。 テクノロジーとインフラは切り離せませんからね。この巨大インフラプロジェクトは、アメリカでAGIを訓練するために不可欠なものです。こういう大規模なデータセンター建設にはどうしてもインフラの許認可が必要になりますから。トランプ大統領はこの点についてとても前向きなんです。 --- Q24. バイデン政権はどうでした? インフラプロジェクトに関して言えば、あまり簡単にはいきませんでした。もちろん他にも良い面はあったんですが、大規模データセンター建設に必要な許認可をポンポン出してくれる感じではなかったですね。だからやりにくさを感じた部分はありました。 --- Q25. シリコンバレーの雰囲気がガラッと変わってしまった印象ですが、そうした変化をどう受け止めていますか? 前の政権は、私の感覚では「敵対的」とまでは言いませんが、テックやビジネスに対してあまり好意的ではなかったように思います。今の政権は、それと比べるとだいぶ違う。やはり、みんな「アメリカ国内で物を作る」「エネルギーを生産する」「半導体の製造を取り戻す」といったことが本気でできるかもしれないと感じていて、それは大きな期待感を生んでいると思います。もちろん大統領のすべての政策に賛成しているわけじゃないですが、協力できるところは協力していこうというスタンスでしょうね。 --- Q26. ポール・グレアムの言葉で「サムはパワーを手に入れることがとてもうまい」というものがあったんですが、今の状況を鑑みるとどう思うか?OpenAIは、理論的には世界を変える力を持っているわけですから。 正直言って、朝起きたときに「もっと権力を得たい」と考えることはありません。でも客観的には、僕がかなり影響力のある立場にいることは事実だと思います。どう折り合いをつければいいか自分でもよくわかりませんが……。 --- Q27. 今日は大統領に会う、明日は別の首相に会うみたいな生活をしていて、不思議な気持ちにならない? 意外とすぐ慣れてしまうんですよね、良いことも悪いことも含めて。確かにこの2年は客観的に見るとかなり特殊な体験をしていると思いますが、当事者としては「これが普通か」という感じで。もちろん別の人生もいいなと思うこともありますが、これが今の生活なんだなと受け止めています。

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